先日(2019年4月21日)に一日回峰行に参加させていただき、そのときのブログで「体力的にきつかったので、しばらく参加しない」と述べたばかりなのだが、
毎日新聞旅行が比叡山三塔巡拝のツアーを募集しているのを偶然みつけたので、本能的に急遽申し込んだ。
5月15日(水)に申し込んで18日(土)に参加するという強行軍である。
参加してから知ったのだが、この巡拝は毎日新聞旅行社が30年以上の歴史をもつツアーであり、それだけ根強い人気があるのだろう。
この三塔巡拝は、千日回峰行を満行された叡南浩元(えなみこうげん)大阿闍梨様を先達として比叡山を巡る修業であり、
筆者が先日参加した「一日回峰行」とは主催者が異なっており、コースも少し違っている。
このブログでは、比叡山延暦寺主催の「一日回峰行」と大阿闍梨主催の「三塔巡拝」の違いについても述べてみたい。
歩行日:2019年5月19日
出発地:無動寺明王堂(1:00)
到着地:無動寺明王堂(8:00)
総歩行距離:20.1 km
本日のルート。図の赤いところ(20km の付近)がスタート地点の無動寺明王堂。
4月21日の「一日回峰行」のコースとほぼ同じだが、元三大師御廟をお参りするなど、少し異なっていた。
集合は2019年5月18日(土)15時に JR 京都駅祭時計広場。
バスに乗り、16時に比叡山延暦寺に着いた。
ここから回峰行のスタート地点である無動寺までは、車で行くことができないため、徒歩で向かう。
途中、坂本ケーブルの延暦寺駅を通る。
延暦寺駅のすぐ横に、無動寺参道の鳥居がある。
この道を行くと、無動寺弁天堂や無動寺明王堂に行くことができる。
明王堂の本尊である不動明王へお供えする水は、この「閼伽井(あかい)」から汲む。
無動寺明王堂に着いた。今日から2日間お世話になるお堂である。
千日回峰行の中で、特にきつい行である、九日間の断食・断水・不眠・不臥を行う「堂入り」もここ明王堂で行われる。
本日の参加者は20名で、そのうち女性は2名であった。
また、初参加者は筆者を含めて7名とのことであった。
筆者ら男性の宿坊はこの「宝殊院」である。
宝殊院の洗面場。
廊下には百日回峰行、千日回峰行の満行者の氏名が貼られている。
「回峰の御牘(ごとく、おふだ)」と書かれている。
これは叡南浩元大阿闍梨が百日回峰行を満行されたときのもの。
筆者の宿坊の横には親鸞(しんらん)上人が修業されていた場所がある。
親鸞上人のそば食い木像が置かれている。
17:00
荷物を宿坊に置き、夕方のお勤めが始まるので、再び明王堂へ戻ってきた。
これは明王堂から見える琵琶湖と大津市街。
この「三塔巡拝」は、前回参加した「一日回峰行」よりもガチ度が高い。
今回、参加者はみな、般若心経を暗記しているようだった。
18:00
お勤めの後は法蔓院で阿闍梨様と夕食を共にする。食事も行のうちなので、私語厳禁。
筆者は阿闍梨様が来られる前に、食事の写真を一枚。
味は濃いめで美味であった。炊き込みご飯も甘めで、筆者好みだった。
精進料理にコロッケが出てくるとは驚きだ。
食事の作法としては、器を持って食べなければいけない。器を置いたまま、箸で取って食べていた参加者は浩元阿闍梨様から注意されていた。
また、たくわんを一枚残して、あとは全てきれいに食べなければならない。
すると、小僧さんが茶碗にお茶を注いでくれるので、そのお茶を残りの器に移して、たくわんで残飯を拭き取り、汁物の器に移した後全て飲み干す。
直接口をつけて良いのは汁物の器だけである。
最後に、たくわんも食べて全てきれいにする。
あと、小僧さんといっても彼らは百日回峰行の行者である。
裸足の裏はあざになっていたり、まめが何度もつぶれていたり、痛々しかった。
また、筆者たちが食事を終えた後、それを片付けてから彼らの食事が始まる。
さらに、回峰行に入る時も、筆者たちが出発するのを「行ってらっしゃいませ!」と見送ってから、
自分たちの回峰行の準備をし、我々よりも先にゴールしてから「お疲れさまでした!」と我々を出迎えてくれた。
これには感嘆せざるを得なかった。
食事後はコーヒーを用意していただき、ティータイム。
阿闍梨様に質問するコーナーを設けていただいた。
筆者は「本日歩くコース」と回峰行者が歩かれるコースが少し異なるのはなぜなのかという質問をした。
その回答は、本当の行者道は、危険な道であったり、同じ階段を三往復したり、根本中堂の周りをぐるぐる参拝したりするからだと教えられた。
また、親の死に目にも会えないこと、病院にも行けないこと、免許の更新にも行けないこと、などは行に入る前から覚悟されていたとのこと。
現在4人の百日回峰行の行者がいるが、彼らがそれぞれどの寺の住職となり、
行をいつスタートさせるかなどの決定権は全て明王堂の輪番である浩元阿闍梨様が有していると説明された。
ティータイム後の写真。中央の座布団は阿闍梨様が座っておられたもの。
19:00
宿坊に戻ってから、少しすると消灯。
19時に眠れるはずもなく、結局筆者は1時間しか眠れなかった。
0:00 起床。
小僧さんが、しそのおにぎりとお茶を用意してくれていた。
0:45
無動寺明王堂に集合。
明王堂から見える大津の夜景。
そうこうするうちに、阿闍梨様が到着。
白装束に蓮笠、小田原提灯と本物の回峰行者のご格好を拝見できて感動した。
もちろん、写真撮影はできないので、YouTube でアップされていたものを。
1:00
阿闍梨様の安全祈願のお加持を受けてから出発。
今回は道中、ほとんど写真を撮っていない。
歩くのが遅い人に対しては、「一番前で歩いてください」とおっしゃられた。
そこで遠慮したりすると、「遅い人が前に来ないと、列がだんだん開くことになるでしょうに!」ときつく言われる場面もあり、
これが修業なのだということを思い知らされた。
明王堂以外で般若心経を唱えた場所は、根本中堂、釈迦堂、横川中堂、律院の 4 か所であった。
各お堂の到着時刻は、
2:00 根本中堂
2:20 釈迦堂
2:40 狩籠(かりごめ)の丘
3:00 玉体杉
3:45 横川中堂
4:05 元三大師堂
5:10 日吉大社・奥宮
6:00 律院
8:00 明王堂
いつか行きたいと思っていた、魔界である元三大師御廟に参拝できて感無量であった。
話に聞いていた通り、周りはきれいなのに、御廟内だけは草ぼうぼうだった。
御廟内を掃除すると「そんな暇あったら修業しなさい」と元三大師がお怒りになり、怪我したりするらしい。
5:15
横川から日吉大社へ向かう下り道で、ご来光が拝めたので一枚。合掌。
5:50
律院に到着。
叡南浩元阿闍梨様の師僧にあたる叡南俊照阿闍梨様に出迎えていただいた。
ここで初めて20分くらいの休憩。
トイレ休憩は2,3回あったが、前回の一日回峰行よりも休憩時間が短かったのも特徴。
6:10
律院を出発。叡南俊照大阿闍梨と律院の小僧さんにお見送りいただいた。
大きな声で「気を付けて行ってらっしゃいませ!」と言っていただいたので、こちらも大きな声で「ありがとうございます!行ってきます!」と返答した。
また、律院を出たところで、犬の散歩をしておられたご夫婦が浩元阿闍梨様のお加持を待っておられた。
阿闍梨様は、真言を唱えられた後、ご夫婦とワンちゃんにもお加持されていたのが微笑ましかった。
6:30
最後の難関である無動寺坂を上る。
筆者が知らなかったこととしては、三度目の千日回峰行中の 2,550 日目に行の途中で亡くなった正井観順(まさいかんじゅん)阿闍梨を供養する祠について、阿闍梨様から説明を受けた。
8:00
明王堂に戻ってきた!
無事に修業できたお礼の般若心経を唱える。
宿坊に戻り、風呂に入る。
パン2個とジュースを毎日新聞旅行のガイドさんからいただいた。
9:00
この階段を登るのもこれが最後。再び明王堂に戻り、朝のお勤め。
百日回峰行ではこの階段を三往復するらしい。実は、まだこの上にも石段がある。
筆者は浩元阿闍梨様から「あなたも三往復しますか?」と聞かれ、とても無理ですと答えておいた。
お勤め後、叡南浩元大阿闍梨から参加証を直接手渡された。
あと、お香もいただいた。
明王堂の御朱印もいただいて今旅満行。「無動寺」。
今回の修業は参加者のガチ度も高く、いろいろと大変だったが、その分学ぶことも多かった。
また、明王堂に小僧さんには、自分たちの行があるにもかかわらず、食事や風呂等で大変お世話になった。
この場を借りてお礼を申し上げたい。
また、律院でも俊照阿闍梨様をはじめ、小僧さんたちも快く出迎えていただき、おかげさまで清々しい朝であった。
もちろん、毎日新聞旅行の方たちにも、筆者たちの安全をずっと見守っていただき、感謝したい。
最後に、浩元阿闍梨様には行に向かう覚悟というものを教えていただき、これは今後の筆者の人生の糧になるものであった。
また「清々しい」気分を味わいたくなったら参加しますので、その時はよろしくお願いします。