以前、大阪の成田山不動尊に初詣に行ったことがあります。
朱色のお堂に雅楽が鳴り響いていて、参拝客の中には自分が神社にいるのか、お寺にいるのか意識していない人もいるようでした。
案の定、「ここは神社ではありません。パンパンではなく、合掌🙏してください」と注意書きがありました。
では、神社とお寺はどのように違うのでしょうか。
神道と仏教
そもそも、神社とお寺とでは、宗教が違っています。神社は神道(しんとう)で、お寺は仏教です。
神道とは、神様を信仰する宗教で、日本で生まれ育った宗教です。
どんな神様かというと、とてもたくさんの神様がおられ、「八百万(やおよろず)の神」とよばれます。
八百万とは、「いろんな商品を売っている八百屋(やおや)」や「よろず屋」から想像できるように、ありとあらゆる神様のことです。
ご神木(しんぼく)という言葉をお聞きになられたことがあると思います。
神道では、山も滝も石も木にも神様が宿っていると考えます。
仏教とは、仏様(ほとけさま)を信仰する宗教で、インド・中国から伝来した宗教です。
仏様にもいろんな種類があり、例えば阿弥陀如来(あみだにょらい)、観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)、そして僕のアイコンにもなっている不動明王(ふどうみょうおう)などがあります。
誰もが口にする「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ、なんまいだー)」は、阿弥陀如来さまに全てをお任せする(南無)という意味です。
神様と仏様
全ての神社には神様がおられます。
例えば、神社のトップに君臨する伊勢神宮の神様は、「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」です。
ですから、これから神社に行かれるときには、どんな神様なのか理解してからお参りされると楽しみが増えると思います。
また、かつて実在した人物が神様として祀られることが多いのが神社の特徴です。
初詣の参拝客が最も多い明治神宮の神様は、「明治天皇」です。
日光東照宮の神様は、「徳川家康」公です。
太宰府天満宮や北野天満宮の神様は、「菅原道真(すがわらのみちざね)」公です。
平安神宮の神様は、平安京最初の天皇である「桓武天皇(かんむてんのう)」と平安京最後の天皇である「孝明天皇(こうめいてんのう)」です。
一方、仏教において、仏様は架空の存在です。
阿弥陀さまやお地蔵さまや観音さまは実在しません。
ただし、例外もあって、仏教を開いたお釈迦さまは「ゴータマ・シッダールタ」という、インドに実在した人物です。
また、真言宗では弘法大師・空海が仏様として祀られています。
天台宗でも、元三大師(慈恵大師・良源)は実在の人物ですが、信仰の対象となっています。
この方は霊験(れいげん)あらたかで、角大師(つのだいし)という鬼に変身して疫病神を退散させます。
鳥居と山門
神社とお寺の入口には門があります。
神社の場合は鳥居(とりい)とよばれ、ここで一礼して境内に入ります。
また、楼門(ろうもん)という門がある場合もあります。
お寺には基本的に鳥居はありません。
お寺の場合は山門(さんもん)とよばれる門があります。
これまで建前を述べてきましたが、実際には「お寺の中に鳥居がある」例はたくさんあります。
これは、神仏習合(しんぶつしゅうごう)という日本独自の風習のためなのですが、話が長くなるので、これについては後日お話します。
本殿と本堂
神社もお寺も、それぞれ境内の中にメインの建物があり、
神社の場合は本殿(ほんでん)、お寺の場合は本堂とよばれます。
本殿にはメインの神様が祀られていて、主祭神(しゅさいじん)とよばれます。
一方、本堂にはメインの仏様が祀られていて、本尊とよばれます。
建物の呼び方
この記事の一番上のところで、「お堂」という言い方をしましたが、
お堂とはお寺の建物のことです。または伽藍(がらん)ともいいます。
「このお寺にはたくさんのお堂があるなあ」「このお寺は伽藍がきれいに並んで建っている」などという言い方をします。
下の写真は、南大門からお堂が一直線に並んだ、いわゆる四天王寺伽藍です。
神社ではお堂、伽藍という言い方をしません。神社の場合は「社(やしろ)」とよびます。
あるいは、神社の境内にある小さな社のことを「摂社(せっしゃ)」「末社(まっしゃ)」といいます。
鐘楼(しょうろう)
要するに鐘です。除夜の鐘がよく知られています。
鐘楼は神社にはなく、お寺にしかありません。
境内に入り、手水(ちょうず)で手と口を清めたら、ゴーンと鐘を鳴らし、仏様に合図をします。
ちょうどお家のチャイムですね。
仏様にお参りした後、鐘を撞くのは「戻り鐘」といってあまり縁起の良いものではありません。
戻り鐘をしてしまったら、再度仏様をお参りしましょう。
また、平地のお寺では、近所迷惑になるため、撞くことが禁止になっている場合もあります。
鈴と鰐口
神社には鈴、お寺には鰐口(わにぐち)があります。
本殿あるいは本堂に着いたら、これらを鳴らして神様あるいは仏様にあいさつします。
鈴はチャリンチャリンと鳴らし、鰐口は一回鳴らします。
二礼二拍手一礼と合掌
神社では、二礼二拍手一礼して、神様にお祈りします。
ただし、宇佐神宮(大分県)や出雲大社(島根県)などでは、二礼四拍手一礼となっています。
お寺では、仏様に対して静かに手を合わせて合掌します。
パンパンしないように注意してください。
見えないものと見えるもの
神社の神様は目には見えません。
代わりに、神様が宿ったご神体として、鏡や剣、勾玉(まがたま)などを置く場合があります。
また、八百万の神が宿っているとして、神石や神木を拝むことがあります。
一方、お寺では仏像や仏画として、仏様を見ることができ拝むことができます。
これを難しい言葉で偶像崇拝(ぐうぞうすうはい)といいます。
結婚式と葬式
一般に、結婚式は神社で挙げる人が多いですが、お寺で挙げる人は少ないように思います。
逆に、お葬式を神社でする人はおらず、もっぱらお寺の仕事です。
これはどういうことでしょうか。
実は、結婚式はお寺で挙げても問題なく、これは仏前結婚式といって、仏様の前で来世までの契りを誓うことができます。
一方、神社でお葬式をされているのは見たことがなく、これは神社が死を「穢れ(けがれ)」とみなすからです。
神社仏閣に仕える人の呼び名
神社のトップのことを宮司(ぐうじ)といい、その下に禰宜(ねぎ)等の職位があります。
そして、これらをまとめて、神職(しんしょく)といいます。
神主(かんぬし)という職位はなく、お寺でいう「お坊さん」のような意味となります。
神社に仕える人と話す場合は、「神主さん」「ご神職」というと良いでしょう。
一方、お寺の場合はトップは住職といいます。
さらにその上の、天台宗や真言宗のトップは「座主(ざす)」あるいは「座主猊下(ざすげいか)」などとよばれます。
お坊さんという言い方は少々失礼にあたりますので、お話しされる場合は「ご住職」「和尚さん」が良いのではないでしょうか。
「和尚」は宗派によって読み方が異なり、浄土宗では「おしょう」、天台宗では「かしょう」、真言宗では「わじょう」となります。
これまで見てきましたように、神社とお寺とでは随分と違う点があることがお分かりになったと思います。
このようなことを理解した上で参拝されると、神社仏閣巡りがより楽しいものになるでしょう。
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寺社の楽しみ方
週末の趣味としての神社仏閣巡り(第 2 回)-神社とお寺の違い
以前、大阪の成田山不動尊に初詣に行ったことがあります。
朱色のお堂に雅楽が鳴り響いていて、参拝客の中には自分が神社にいるのか、お寺にいるのか意識していない人もいるようでした。
案の定、「ここは神社ではありません。パンパンではなく、合掌🙏してください」と注意書きがありました。
では、神社とお寺はどのように違うのでしょうか。
神道と仏教
そもそも、神社とお寺とでは、宗教が違っています。神社は神道(しんとう)で、お寺は仏教です。
神道とは、神様を信仰する宗教で、日本で生まれ育った宗教です。
どんな神様かというと、とてもたくさんの神様がおられ、「八百万(やおよろず)の神」とよばれます。
八百万とは、「いろんな商品を売っている八百屋(やおや)」や「よろず屋」から想像できるように、ありとあらゆる神様のことです。
ご神木(しんぼく)という言葉をお聞きになられたことがあると思います。
神道では、山も滝も石も木にも神様が宿っていると考えます。
仏教とは、仏様(ほとけさま)を信仰する宗教で、インド・中国から伝来した宗教です。
仏様にもいろんな種類があり、例えば阿弥陀如来(あみだにょらい)、観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)、そして僕のアイコンにもなっている不動明王(ふどうみょうおう)などがあります。
誰もが口にする「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ、なんまいだー)」は、阿弥陀如来さまに全てをお任せする(南無)という意味です。
神様と仏様
全ての神社には神様がおられます。
例えば、神社のトップに君臨する伊勢神宮の神様は、「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」です。
ですから、これから神社に行かれるときには、どんな神様なのか理解してからお参りされると楽しみが増えると思います。
伊勢神宮
また、かつて実在した人物が神様として祀られることが多いのが神社の特徴です。
初詣の参拝客が最も多い明治神宮の神様は、「明治天皇」です。
日光東照宮の神様は、「徳川家康」公です。
太宰府天満宮や北野天満宮の神様は、「菅原道真(すがわらのみちざね)」公です。
平安神宮の神様は、平安京最初の天皇である「桓武天皇(かんむてんのう)」と平安京最後の天皇である「孝明天皇(こうめいてんのう)」です。
平安神宮
一方、仏教において、仏様は架空の存在です。
阿弥陀さまやお地蔵さまや観音さまは実在しません。
ただし、例外もあって、仏教を開いたお釈迦さまは「ゴータマ・シッダールタ」という、インドに実在した人物です。
また、真言宗では弘法大師・空海が仏様として祀られています。
弘法大師・空海
天台宗でも、元三大師(慈恵大師・良源)は実在の人物ですが、信仰の対象となっています。
この方は霊験(れいげん)あらたかで、角大師(つのだいし)という鬼に変身して疫病神を退散させます。
角大師
鳥居と山門
神社とお寺の入口には門があります。
神社の場合は鳥居(とりい)とよばれ、ここで一礼して境内に入ります。
また、楼門(ろうもん)という門がある場合もあります。
伏見稲荷大社の一の鳥居
鶴岡八幡宮の楼門
お寺には基本的に鳥居はありません。
お寺の場合は山門(さんもん)とよばれる門があります。
高野山の山門(大門)
これまで建前を述べてきましたが、実際には「お寺の中に鳥居がある」例はたくさんあります。
これは、神仏習合(しんぶつしゅうごう)という日本独自の風習のためなのですが、話が長くなるので、これについては後日お話します。
本殿と本堂
神社もお寺も、それぞれ境内の中にメインの建物があり、
神社の場合は本殿(ほんでん)、お寺の場合は本堂とよばれます。
本殿にはメインの神様が祀られていて、主祭神(しゅさいじん)とよばれます。
一方、本堂にはメインの仏様が祀られていて、本尊とよばれます。
熊野本宮大社の本殿
東本願寺の本堂(御影堂)
建物の呼び方
この記事の一番上のところで、「お堂」という言い方をしましたが、
お堂とはお寺の建物のことです。または伽藍(がらん)ともいいます。
「このお寺にはたくさんのお堂があるなあ」「このお寺は伽藍がきれいに並んで建っている」などという言い方をします。
下の写真は、南大門からお堂が一直線に並んだ、いわゆる四天王寺伽藍です。
神社ではお堂、伽藍という言い方をしません。神社の場合は「社(やしろ)」とよびます。
あるいは、神社の境内にある小さな社のことを「摂社(せっしゃ)」「末社(まっしゃ)」といいます。
愛宕神社の摂社
鐘楼(しょうろう)
要するに鐘です。除夜の鐘がよく知られています。
鐘楼は神社にはなく、お寺にしかありません。
境内に入り、手水(ちょうず)で手と口を清めたら、ゴーンと鐘を鳴らし、仏様に合図をします。
ちょうどお家のチャイムですね。
仏様にお参りした後、鐘を撞くのは「戻り鐘」といってあまり縁起の良いものではありません。
戻り鐘をしてしまったら、再度仏様をお参りしましょう。
また、平地のお寺では、近所迷惑になるため、撞くことが禁止になっている場合もあります。
知恩院の大鐘楼
鈴と鰐口
神社には鈴、お寺には鰐口(わにぐち)があります。
本殿あるいは本堂に着いたら、これらを鳴らして神様あるいは仏様にあいさつします。
鈴はチャリンチャリンと鳴らし、鰐口は一回鳴らします。
熊野那智大社の鈴
宝積寺の鰐口
二礼二拍手一礼と合掌
神社では、二礼二拍手一礼して、神様にお祈りします。
ただし、宇佐神宮(大分県)や出雲大社(島根県)などでは、二礼四拍手一礼となっています。
お寺では、仏様に対して静かに手を合わせて合掌します。
パンパンしないように注意してください。
見えないものと見えるもの
神社の神様は目には見えません。
代わりに、神様が宿ったご神体として、鏡や剣、勾玉(まがたま)などを置く場合があります。
また、八百万の神が宿っているとして、神石や神木を拝むことがあります。
一方、お寺では仏像や仏画として、仏様を見ることができ拝むことができます。
これを難しい言葉で偶像崇拝(ぐうぞうすうはい)といいます。
結婚式と葬式
一般に、結婚式は神社で挙げる人が多いですが、お寺で挙げる人は少ないように思います。
逆に、お葬式を神社でする人はおらず、もっぱらお寺の仕事です。
これはどういうことでしょうか。
実は、結婚式はお寺で挙げても問題なく、これは仏前結婚式といって、仏様の前で来世までの契りを誓うことができます。
一方、神社でお葬式をされているのは見たことがなく、これは神社が死を「穢れ(けがれ)」とみなすからです。
神社仏閣に仕える人の呼び名
神社のトップのことを宮司(ぐうじ)といい、その下に禰宜(ねぎ)等の職位があります。
そして、これらをまとめて、神職(しんしょく)といいます。
神主(かんぬし)という職位はなく、お寺でいう「お坊さん」のような意味となります。
神社に仕える人と話す場合は、「神主さん」「ご神職」というと良いでしょう。
一方、お寺の場合はトップは住職といいます。
さらにその上の、天台宗や真言宗のトップは「座主(ざす)」あるいは「座主猊下(ざすげいか)」などとよばれます。
お坊さんという言い方は少々失礼にあたりますので、お話しされる場合は「ご住職」「和尚さん」が良いのではないでしょうか。
「和尚」は宗派によって読み方が異なり、浄土宗では「おしょう」、天台宗では「かしょう」、真言宗では「わじょう」となります。
これまで見てきましたように、神社とお寺とでは随分と違う点があることがお分かりになったと思います。
このようなことを理解した上で参拝されると、神社仏閣巡りがより楽しいものになるでしょう。
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